調理にフライパンも鍋も必要ねぇ!現代の環境からは想像もできない野生料理を紹介
皆さんは絵本好きですか?(この記事と関係が微妙にない質問です)
自分は本当に絵本が大好きでした。
今でも実家に帰りますと幼かった昔に帰ったような気持ちで、ボロボロの絵本を壊さないようにゆっくりとめくることがあります。
そんな絵本の中でも特に好きだったシーンがありまして。
大分記憶があいまいなのですが、「外に落っこちてるダチョウかなんかのでかい卵を、ふっくらとした卵焼きにして食べる」というシーンです。
その卵焼きの美味しそうな見た目もそうですが、何より野外で調理機器を使わずに野生の環境で作り上げた、という事実に心ときめかされました。
人ん家に生えている雑草の類を、3時のおやつ代わりにムシャムシャ食べていたこともあったほどの野生児だったため、余計に心惹かれたのでしょう。
つい最近読んだ「猟師の肉は腐らない」という本の中に、自然環境の中で調理器具を使わずに作り上げられた料理の記述があったので、紹介させてください。
将来、ベアグリルス的な業界に行きたい人は必見です。
猟師の肉は腐らないについて
アマゾンより引用した内容紹介を御覧ください。
猟師の知恵に思わず脱帽! こんな豊かな暮らしが山ン中にあるなんて。世界を巡った末に、故郷・阿武隈の山 奥に戻った猟師の義っしゃん。愛犬をお供に猪を狩り、岩魚を釣り、灰や煙を使って保存食を作り、冬に備え、危険から身を守る。蜂も蝮もなんだってご馳走になる。自然と生きる猟師の暮らしは、先達から受け継がれた様々な知恵と工夫がてんこ盛り。命の連鎖も身をもって学んだ、驚きの体験記。
猟師のおっちゃんの暮らしぶりを、現代人の普通?のおっちゃんが見て、聴いて、感じる物語です。
それではざっとした紹介が終わったところで、いよいよ自然を台所にした野生料理2つを紹介しましょう。
自然を台所にした野生料理➀「野兎の灰燻し」
猟師の義っしゃんが飼っている猟犬リュウは度々、野にいる獣を獲って家まで持ってくるということをするほど優秀な犬なんですね。
そんなリュウがある日獲ってきてくれた「うさぎ」。
なんと義っしゃんはそのうさぎを腐らせない調理をするというんです。
しかも冷蔵庫を使わずに。
というわけで、さっそくその腐らせないうさぎの調理の様子を書いていきます。
➀まず、野兎の下処理を始めます(毛皮をはいで内臓を取り出す)。
この内臓を取り出す方法がとても変わっているので、紹介させてください。
おもむろに木の枝をうさぎのけつにぶっさし、ぐりぐりと先端を回し始めて一気に引き抜くと内臓がボロっとついてくる、というもの。
なんかこういう拷問方法、中世ヨーロッパにあったって言われても信じます。
ファラリスの牡牛並に嫌。
恐らく我間乱の虎穿は、この技法を参考にしているのでしょう。
➁穴を掘る(地面に)
➂穴の中(地面の)に葉っぱを敷き詰め、その上に内臓を失くしたうさぎを載せ、更にその上に葉っぱをかぶせる
④燃やす
⑤燃やした際に発生した灰をうさぎの肛門からガンガン詰め、全身にもまんべんなく擦り付ける
そう、腐らない調理法というのは"燻製"
とはいえ、燻製液を使いチップを準備して......といった現代人に想像できる燻製とは大分趣が違いますよね。
豚の肛門に灰を突っ込んで、ベーコンを作らないですもんね。
強いて言えば秋田の名物「いぶりがっこ」の燻し方に近いかなぁと、大分強引ですけど。
灰を肉に擦り付けるというやり方は、やはり珍しいものでしょう。
ちなみに葉っぱを燃やした際発生する煙と灰に殺菌効果があるそうで、そのおかげで腐らないうさぎ肉になる、という原理なよう。
燻製が終了したら、山小屋に戻り丁寧に焼いて食べました。
噛むと鼻腔から瞬時に煙の匂いがスーッと抜けてきて、口の中では硬い肉が歯と歯に潰されてほこほこと崩れてゆき、そこから野生に育てられた動物しか持っていない濃いうま味がジュルジュルと湧き出してくるのであった。
(猟師の肉は腐らないp69より引用)
めちゃくちゃうまそう。
自然を台所にした野生料理➁「水音焼き」
これは岩魚と山女を使った料理になります。
ちなみにこの水音焼きをやった場所は河原。
調理器具などあるはずもないわけです。
それでも凄まじい調理をする義っしゃんの水音焼きの作り方、辿っていきましょう。
➀川から離れた砂地にて穴を掘り出し、それが終わると林に入って蕗の葉を獲ってくる
➁穴に蕗の葉を重なるように敷き詰め、すでに塩を擦り付けてあった岩魚と山女をその葉の上に乗せる
➂更にその魚の上に葉を乗せて、枯れ木も一緒に乗せてあげる
④ライターで火をつける(ここは文明の利器を使います)
そう、「水音焼き」とは蒸し焼きのことだったんですね。
ちなみに水音焼きの由来は、近くに流れる川の水の音を聞き魚を焼くことから来ているそう。
似たような料理は都会でもできそうですけど、本当の意味での水音焼きは難しいです。
そして口に入れて噛んだ瞬間、鼻孔からは蒸された蕗の葉の、干し草のようなかすれた匂いが抜けてきて、それに打ち消されたのか魚の生臭みは全く無い。噛むほどに口の中には、岩魚の品の良いうま味と微かな甘みとがピュルル、チュルルと湧き出してきて、それを皮と身の間についていた少しの脂肪のペナペナとしたコクが押し上げ、あじわいは絶妙であった。
(猟師の肉は腐らないp54引用)
ペナペナって表現が個人的に気になります。
実家に帰りたくなった
岩魚とか山女の話をしていたら、なんだか実家に帰りたくなりました。
何もないのどかな村なんですけど、川魚は本当に美味しいんです。
皆さんもこの本を読んで、実家に帰るか、どこか田舎へ旅行でもしにいってみてください。
そのときめちゃめちゃなまって何言ってるのかわからない人がいたら、その人はもしかすると”義っしゃん”かもしれません......